審査会を終えて

 

朝夕は秋を感じる本日10月2日、伊丹アイフォニック小ホールにおいて第10回日本オカリナコンクール動画審査会を開催いたしました。

全国から応募された35組の皆様、熱意溢れる演奏ありがとうございました。

また、これらの演奏動画を朝から審査してくださいました先生方にお礼を申し上げます。

新型コロナの影響により苦渋の決断で始めた動画審査というかたちは、遠く離れたところにお住まいの方々の参加を促したように思われ実行委員一同嬉しく思っています。

最後になりましたが、開催に際しましてご協力いただきました団体様、企業様に心より感謝申し上げます。

なお、今月29日には第10回を記念しましてガラコンサートを伊丹アイフォニックメインホールにて開催いたします。北は北海道から南は福岡まで過去の受賞者の皆様の演奏をステージで披露していただきます。

素晴らしい響きのホールで皆様と生の音に心揺さぶられますことを楽しみにしております。

 

実行委員長 小林理子

 

 

審査員のコメント

橋詰 智章

 

 

 

今回は節目となる10回目のコンクールとなりました。

発足から実行委員として、近年は審査員として多くの演奏を聴かせて頂きました。当初から比べると随分オカリナを演奏する技術が高くなってきていることを感じます。特に今回の演奏の中には目を見張るものがあり、より音楽的に演奏しようとする意識が上がってきていることを感じました。オカリナで「音楽をする」ことを大切に育んでこられた成果だと思います。

「こういう音楽にしたい」という思いは技術を向上させます。技術には、指や舌の使い方、息の使い方、体の使い方、耳の使い方(聴き方)、頭の使い方などがあります。人によってスタート地点が違うので、思わぬところで苦労することもしばしばですが、「こういう音楽にしたい」を実現するために具体的にどうすればよいのかを考えることはとても重要です。ふさわしくないなら、ふさわしくなるように。それを繰り返すうちに、気づけば引き出しが増えて、望み通りの音が取り出せるようになってきます。また、自分の癖がわかるようにもなり、苦手なことも少なくなっていくことでしょう。そして自分にとって継続的に(恒久的に)練習しなければならない課題を見つけて下さい。技術の修得と共に、実現したい音楽(音楽性)が洗練され「こういう音楽にしたい」がどんどん膨らんでいくと良いですね。また、そのためには「聴くこと」「耳を育てること」も大切です。「良いとされる演奏」を嗅ぎ分けて、自分とは違う発想を得ることも大切ですね。是非、入賞された方々の動画をご覧になってください。それらに共通している「良いもの」を探し出してください。

 

 

 

橋詰審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)     

プラス評価  楽しさの伝わる演奏でした。丁寧によく吹けています。

マイナス評価 ピアノとの音程が気になります。メロディを自分のものに出来ていないです。いろんな演奏をもっと聴いて、演奏を学んでください。

 

 

 

 

嶋 和彦

 

 

まず印象に残ったのは、シニア部門のレベルの高さです。これまでも、技術面はさておいて、音楽性、歌心においては魅力的な演奏が多かったのですが、今回はテクニック面でも急にレベルが上がっていて驚きでした。考えて見れば、これまで一般部門で技を磨いてきた人が、年月を経ると自動的にシニア部門の年齢になるのですから、シニア部門がレベルアップするのは当然のことでしょう。これからが益々楽しみです。次に一般部門ですが、今回は突出して優れた演奏が無かったことが残念です。課題曲の曲想や旋律線の理解や、自由曲での選曲、伴奏の位置付など、多くの課題が見られました。オカリナのコンクールであることを忘れてはならないでしょう。最後にデュエットと合奏部門ですが、どちらも複数の奏者でひとつの音楽を作るということを大切にして欲しいと思います。料理に例えれば、複数の食材と調味料を使い、表面に出る味や隠し味を使い、上手く混合、ブレンドしてひとつの料理を作る、ということです。ひとつの音楽になるように研鑽に励んでください。

 

 

 

嶋審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)     

プラス評価  音程はよく溶け合っています。

マイナス評価 心の想いが伝わるように。もっと表情の変化を付ける方が良いのではないでしょうか。音楽になるように気を付けてください。

 

 

 

 

 

石若 雅弥

 

 

動画審査となって4回目。撮影に慣れた方も参加いただき、(評価には関係ありませんが)凝った動画もあり楽しませていただきました。

全体的に演奏のレベルも上がってきているのも、聞きごたえがあり嬉しいです。

更なる改善を求めるとすると、アンサンブルなどの時にきちんと音程をあわせるように頑張っていただきたいですね。

完全1度のユニゾンもそうですが、オクターブももう少し調和のとれた音程を心がけてください。

また皆様の演奏を楽しみにしております

 

 

 

石若審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)     

プラス評価  変化のある選曲でいいですね。楽しそうに軽やかに演奏されているのに好感が持てます。ピアノとのバランスも良いです。

マイナス評価 音が細かくなるとやや聞こえにくい個所も。緊張感が伝わってきてしまいますね。

 

 

 

 

 

小林 達夫

 

 

 

今コンクールも節目の10回目となりました。私は発足以来、毎回審査員を務めさせていただいており、近年は自由曲の著作権コントロールのお手伝いもさせていただいております。今年も審査を終えて気がついたことを書かせていただきます。

 

1)暗譜演奏について

 嬉しいことに今年は暗譜で演奏された方が半数近くの15組もありました。そしていずれも美しい演奏でした。その中から受賞された方も多かったと思います。楽譜は地図のようなもので、地図を見ながら歩くのが不自然なことであるように、楽譜を見ながらの演奏というのは「年中新しい曲やその場で渡された楽譜を演奏することの多い」職業音楽家達の例外的な習慣と捉えておきたいです。

 

2)著作権クリアについて

 著作権保護期間内にある曲の改変については、該当するすべての方が著作権に関して理解なさって、著作権者への申請と許諾を得るという労をいとわずにクリアなさっています。オカリナは手軽な楽器であるがゆえにコピー楽譜のひとり歩きや無許諾の改変による演奏などが起こりがちです。しかしそれらを繰り返していてはこの世界に将来性はありません。曲や楽譜の出自を勉強することは自身の演奏のレベルアップにも欠かせないことですので、楽器としての歴史が浅い(ということは出版譜がまだまだ少ない)オカリナでは演奏者各自がパイオニアであり、伝道者であるという使命を持っているのではと思います。

 

3)ピアノとのバランスについて(個人的な意見です)

 今回17組(約半数)のピアノ伴奏での演奏がありました。そこでぜひもう一度考えたいのは、そもそもグランドピアノの音量はオカリナ演奏の伴奏として適しているのか?ということです。熟慮の上に選択された方もおられるとは思いますが、「楽譜がそうだから」「会場にあったから」「それしかなかった」など、定食メニュー的に選ばれている部分もあるのではないでしょうか?

 グランドピアノはサロン演奏向きの小音量の楽器から発展進化し、今やオーケストラとの協奏曲を奏でられるほど大音量を持つに至った楽器です。多分オカリナと一緒に演奏してもらうには初期のサロン向きだった頃の音量の楽器が適しているのではないでしょうか?とはいえ、そんなピアノは現代には博物館にしかなく、選択の余地は殆どないように思えます。

 その結果多くの方の対処が「蓋を閉める」「オカリナとピアノが離れる」「伴奏の音が大きすぎることに目をつぶる」など、あまり嬉しくない結果となっているようです。それにより、ピアノの音色が曇る、精密なアンサンブルワークに欠ける、オカリナの低い音が聞こえて来ない、などのデメリットを生じています。少し小さめのピアノやアップライトピアノのときはそれほど力負け感は感じませんが、基本的に両者はつり合いにくいのでは?と思います。

 前回に池上審査員が書いておられたように電子ピアノの採用やあるいは、伴奏譜を低音量に向けて書き換える(著作権には配慮して)、集合住宅用の弱音器という手もありかもしれません。現代の一般的な木管楽器(フルート、クラリネット、サックスなど)と比べてオカリナやリコーダーは一段以上音量が小さいと思います。しかしそれが良さでもあるのではないかと私は思っています。その良さを活かしつつ、としたいですね。

 

4)その他

 奏法的なことにつきましては前回のコメントに書きましたことの殆どが今回にも継続という感じです。(「過去のコンクール」よりご覧になれます)

 

 

小林審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋

プラス評価  よく歌うように演奏されています。楽譜の選択はとても良いですね。暗譜◯です。

マイナス評価 ずっと音程があっていないというのが第一印象です。暗譜を推奨。余分な指の被さりはないですか? 楽譜の行間を読む。推理と実践、見直しの繰り返しが大事です。

 

 

 

 

 

 

エミリアーノ・ベルナゴッツィ

 

 

 

コンクールの運営スタッフの皆さま、審査員の皆さま、参加された素晴らしい音楽家の皆さま、そして日本の友人の皆さま、こんにちは。

 

 私は、世界で最も重要なオカリナに捧げられたこの素晴らしいコンクールの審査員に招かれ、何年も経った今でもここにいます。毎年、新旧の友人に出会える大家族のようなこの美しい場に参加できることは、とてもエキサイティングで光栄なことです。

小林理子氏との長年にわたるコラボレーションの素晴らしい点は、私たちの愛する楽器であるオカリナを通して、イタリアと日本の文化交流の信頼と相互の分かち合いを感じることができることです。

また今年はようやく、記念ガラ・コンサートで直接顔を合わせることができ、素晴らしい音楽の一日を分かち合うことができます。

Covidによる問題にもかかわらず、主催者たちはこのコンクールを動画審査という形でなんとか守り続けてきました。

 

 私のことを良く知る人は、私がコンクールの価値と意義についてどう考えているかご存知です。音楽は決して競争であってはならず、お互いを知り、意見や考えを分かち合い、共に成長し続けるためのものであるべきだということです。

しかし、勝者を決定するためにはルールに定められたジャッジを下さなければなりません。

感情をこめて、笑顔で、自分たちの音楽を聴かせたいという思いで、私たちのために演奏してくれたすべての候補者とグループに感謝したい。

音楽はすべての人のものであり、言語、年齢、国の違いはありません。音楽は世界中の人々を分け隔てなく結びつける世界共通語なのです。

 

音楽をありがとう

エミリアーノ・ベルナゴッツィ

 

 

 

エミリアーノ審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)     

プラス評価  あなは本当にとても上手なので、もっと大げさに表現することをお勧めする。

マイナス評価 ピアノとのイントネーションの問題があります。イントネーションの問題があるが、これは過剰な表現による。